2018/09/16

レポート【木で頭がいっぱい】林業行脚・北から南

台風やら大雨やらに阻まれながら、合間を縫ってただいま高知・黒潮町の山ん中で「林業修行」。
アブが飛んだり、ヤブをかき分け斜面をよじ登ったり、メジャーを携え上から下から往復を繰り返し、足元が滑って下草と泥と虫にまみれる。

ふと去年の夏、シュノーケルつけてはじめて日本海を泳いで「海もいいなぁ」と思ったことを思い出した。
海水にまみれるのも気持ちいいけど、今の自分は山のヤブの中、転がっているのがピッタリな気分なんだなぁ、って。

この「山の中で転がる」のが気分いいって、いつもいつもじゃないし、どうがんばっても苦手な人もいるだろうし、たまたま私は好きな方だった。
こういう思いは、もう一つ同時に考えている長須での高校生との紙漉活動で、彼女たちの思いに何か答えたいことの一つ。
「香美町の魅力を発信する」「田舎の良さ」というのはつまり、何かに比べて良いということでもなく珍しさでもなく、単に「自分が好き」ということなんだと思う。
どれだけ自分が好きで、どんなふうに好きなのかを体現して、表現できれば誰かに伝わって、続いていく、つながっていく。
随分前に読んだ福岡伸一さんの「ルリボシカミキリの青」という本に、「沈黙の春」という本を書いたレイチェル・カーソンさんの言葉が紹介されていて、「幼い頃に『何に美しさを感じた』か、ということが将来ずっと自分を支える」というような解釈を福岡さんがされたいた。それは自然のことだけでなく、人工物でもいい、と。
今読み返している竹写真家・高間新治さんの「竹を語る」にも、ピンとくるフレーズがある。白川郷の合掌造りについて「文化庁や県の力というより、代々ここに住み、これからも住みたいとする人々の心に由来する」というくだり。

それを美しいと思うんだったら、好きなことなんだったら、誰もやらなくても、自分一人でもやればいい。

町の暮らしが好きな人はそれでいいし、お笑いが好きな人もそれでいい。
私はどちらにも関心は持てないけど、落語や音楽もすごく好きだし、呑んだり食べたり、山も好き。
目の前にある素材からモノがつくれて、お金に還元されたりブツブツ交換になったりして、誰かの手元に渡る。
エネルギーも自分で集めた木々でご飯を炊いたり、お湯を沸かす。
そういう仕事と暮らしが「美しい」と思うし、とにかくオモシロクて好きなんだ。

そのことが世界の裏側の人の暮らしや、地球の環境を破壊したり搾取することのない生き方につながればいい。
世の中や社会にしょっちゅうボヤいたり怒ったりもするけど…

 ーーーーーーーーーーーーー

前置きが長くなったけど、8月末から香美町の南隣・養父市で「自伐型林業研修」がはじまった。全部で5回(それぞれ2日連続)。

講師は現在篠山市にお住まいの山口さん。
70代には見えない、若々しい方だ。
先日お世話になった豊岡市・椒の「NextGreen但馬」さんたちが「冬の間、多可町の山口さんの山でお世話になっている。」と話されていたり、山口さんのことはパートナーのマサちゃんからも聞いていた。
第1回目は半分座学、林業における安全・危険など基本やルール、事例をテキストに沿って学ぶ。
チェーンソーの基本、そして私にとっては大難関の「目立て」。
この時は山口さんの実演と講義だけだったけど、随分理屈がわかって、少し目立てについて安心感ができた。(後日、全然できなくて再び落ち込むが・・)


そしてもう半分は実際に山に入って、早速実演を見る。
木の駅プロジェクトのステップアップ講習会や、けびの森くらぶでも何度も伐倒も見たし、自分でもやってみていたけど、毎回木が倒れる時はドキドキする。
その木を使って、みんなでチェーンソーの基礎練習。
はじめはエンジンもなかなか掛けられず、悲しい・・・
とにかく「真っ直ぐ、水平、止めたいところで止める」この3つを徹底して習得する。
今回は数回ほどしか練習できなかったし、まだチェーンソーを支えるコツがわからず重たくて腕パンパン・・・





なにはともあれ、市外から前日の飛び入り申込みにもかかわらず、参加者さんたちの「今やってた方がいいよ!」とのお言葉に甘えて、枝払いと回し切りをさせてもらう。
・・・うーーーん、初めてでも下手くそすぎる・・・
木に対して垂直じゃないわ、切れ目は合ってないわ。
平地で切るのと、射面できるのは大違い。
ヒノキさん、ごめんなさい。
これからの課題、長い道のりを感じる瞬間だった。
9月の講習もがんばるぞーーー!!

ーーーーーーーーーーーーー

そんな志し?を聞きつけたのか、9月1日から高知のマサちゃんのところへ行くタイミングで、四万十市の宮崎聖さんが「実際にヒノキ切って出荷しようか?」と研修を提案してくれて、マサちゃんと超初心者のワタシに「選木・伐倒・造材・集材」の第一歩を3日間に渡り、実践&実践で教えてくれた。


あまりおしゃべりでない聖さんの話は、ほぼ要点。
大事なことは「どの木を伐ってあげれば、周りの木が喜ぶか、今後良い木に育つか」ということと「この木を伐って市場に出せばいくらになるか」という計算。

ちなみに私達がやろうとしているのは間伐して収益をあげようというやり方。
国が推奨する3割でなく、1〜2割以下の少ない間伐。
木の値段は私が生まれた昭和50年代にピークとなり、今はその1/8や1/7にまで下がっている。そのため、多くは「林業をやってもお金にならない」とされているけれど、
時間と共に木はほったらかしながらも成長し大きくなって、それなりの価値を持っているので、聖さんの言うようにちゃんと計算して、経験を積み技術の向上、見る目、スピードアップすれば、ちゃんと収入が得られる仕事なのだ。

まずは普通に間伐して普通に市場に出して収益が上げられるようにするのが私達の目標。

ちなみに
■「選木」は目的に合わせてどの木を伐倒するか選ぶこと。
■「伐倒」は間伐の場合、残す木を傷めず、安全に集材しやすい方向で木を切り倒すこと。
■「造材」は伐った木をどの位置でどのくらいの長さで切り分ければ、高値が付くかをよく観察し、正確に計算して切ること(最初に立っている状態で木の曲がりなどおおよそ検討をしておく)。ここを手を抜かず、多少時間をかけてでも測り直したり計算し直したりして、よりよい方法を選ぶように、と聖さんに教わった。
原木市場では基準になる値段表があり、それに合わせて測ったり料金の計算をする。
実際15分ほど時間はかかったけど、1000円ほどプラスになった木があった。「15分1000円なら時給で4000円、いい仕事でしょ?」って。なるほどーーー!
■「集材」は山の中で伐った木を様々な方法で集めて、土場と言われる木を積んでおく場所まで運ぶこと。今回は「林内作業車」というキャタピラーで山中の作業道を移動できる重機で、長いワイヤーを動力で巻き取りながら、ストック台に集めることができる。



自分たちで伐って、それなり?に造材して林内作業車で集材する。
はじめて操作する作業車。こわごわこわごわ。
この威力を知ってしまったら、ますます「林業」が身近に感じられる。
最長6mのヒノキ丸太を積む。

6mの丸太ってすごいよ。
怪物〜〜!迫力満点!
あ、でもクジラやサメとかってもっと大きんだな、とか妄想も膨らむ。


ゆがんだけど経40cm以上はあるスギの元をバッサリ、気分がいい〜
聖さんがいない間も作業車を貸してもらい、未熟な二人でホントにこわごわ、大まかに造材した木を集める。
はっきり言って、かなり思うように動いてくれない・・・動かせない。
こんな大きな機械でも制御しきれないくらいの木もあるし、小さいと思ってた木でも想像以上に重たいし、思わずボン!と突っ込んできたり、ブン!と振られたり、何が起こるのかを常に想像しながら(それもできないんだけど)、手を変え品を変え二人で協力して積み上げる。
命がけだし怖い思いもするけど、これが数学やパズルみたいで楽しい。
何度か山から集材して土場に運ぶのを繰り返していると、少し気持ちにゆとりもでくる。

アブも飛んでるし泥んこ汗まみれになるけど、フッとした時や休憩時間にみあげるヒノキの木漏れ日、谷から流れてくる風、外はカンカン照りで暑くても森の中は涼しく、とにかく気持ち良くて「体動かして汗かいて、山の仕事ってやっぱりいいなぁ〜」シアワセ。

ーーーーーーーーーーーーー

そんなこんなで大きな流れはわかってきたものの、全然チェーンソーの基礎がなってなくて、せっかくのいい材も価値を下げてしまったり、時間もとてもかかってしまう・・・
何より危険!ということもあって、ちょうど聖さんが関わっている宿毛市ではじまった「自伐型林業」の研修会に飛び入りで参加させてもらった。

講師は愛媛県の菊池さん。
どうやら研修第2回目の講義のようで、1回目の内容はわからないけど、養父市で受けてた講義も役立って話になんとかついていけた。
しかも2日間、みっちりチェーンソー捌きを練習するという、まさに私達にピッタリの内容だった。
雨模様でもしっかり使える港の作業場。
ここでも「垂直に、水平に」を基本に、「余計な力を入れない」練習を追求。
結果、技術はもちろんだけど、それらを正確にするためには「目立て(刃研ぎ)」が基本の基本!ということで、目立から指導をうける。
張り切ってやってみたものの、そんなんに直ぐにできるほど甘くない。
・・・切れない・・・
切れるんだけど、余計な力が入ってしまう。これはNG。
やっぱり「道のりは長い」と感じる瞬間。
でも、あの山仕事の楽しさを思い出し、上手に正確にスピーディーに伐倒・造材できるようになれば、もっと楽しくなると思うと、目立ての向上も楽しみにの一つになってきた。

「伸びしろ100%」って、すごい楽しいなーー!
林業行脚まだまだ続く。


0 件のコメント:

コメントを投稿